印刷 通販の構造

それから一0年ほどたって『史上最大のミステーク』が出て、技術系の担当者が評価して、社内で勉強会が始まったんです。
その四年ほど前に当社は辰村組と合併して、全社的な見直しのなかで『高耐久の建物』というのがキーワードとしてありましたから、『史上最大のミステーク』の内容はタイミングが良かったんですね。 それで外断熱工法へのアプローチが始まったわけです」(S氏)。

S氏が外断熱プロジェクトの担当になったのが二00一年。 その年の一一月にはデ−タリサーチの目的をかねたモデルハウス「プロミネント奥沢」(世田谷区東玉川)が竣工しました。
「三階建て、二所帯の二DKです。 一年間はモデルハウスとしてユーザーさんに見ていただきながら、室内の温度や湿度などのデ−タを取っていきました。
これで外の気象状況と室内の温度の関連、省エネの状況、室内の空気環境などが詳しくわかったことは、大きな収穫だったと思います。 現在は第三者の手に渡って住まわれていますが、そのままセンサーを置いて、記録を取らせていただいています」(S氏)。
南海辰村建設でも、コストダウンは重要な課題です。 同社は早くから通気層のある本格的な乾式外断熱工法に真正面から取り組んできたゼネコンですが、これから外断熱工法が一般化する段階では、湿式外断熱工法が大きな役割を果たすだろうという見解のようです。
「われわれが通気層のある乾式外断熱工法に取り組んだのは、当時まがいものの外断熱が出ているといわれていたので、やるからにはきちんとした外断熱でやらないと信用を獲得できないと考えたからです。 これからは、チャンスがあれば両方をエリアに入れていきたいと考えています。
問題は断熱材です。 いま日本では、湿式で乾式工法程度の性能を出せる発泡系断熱材がありません。
また外装のメンテナンスの問題があります。 簡易系の外装材で五から一0年に一度やり変える前提なら、同じ建物をロ−コストで手に入れることは可能でしょう」(S氏)
いまマンション供給はどうしてもデベロッパ−が主ですから、建物の外観としてはタイル貼りが前提になっています。 しかし個人住宅でモルタル塗装系の仕上げでもいいとなれば、さほど高くない外断熱ができる、というわけです。
湿式断熱材はドイツから良いものが来ていますし、普及してくれば日本でも開発が進むでしょう。 もしデベロッパ−が湿式外断熱を積極的に取り入れるようになれば、外断熱は爆発的に広がる可能性があると、S氏も指摘していました。
日本のマンションは平均寿命が一二六歳と、国も認めています。 一九七0年代、一九八0年代と雨後のたけのこのようにマンションが建ち並び、いまや古くなって誰も住まなくなったからと、人気の高層マンションが建ち並びつつあります。

一般のマンション・ユーザーのなかには、こうしたスクラップ&ビルドは結局ゼネコンが儲けるためなんじゃないか、一00年ももつマンションを建ててしまったらゼネコンが困るから建てないのではないかと、そういう疑問も聞かれます。 少しいじわるな質問でしたが、S氏にぶつけてみました。
「うーん、それはナンセンスな議論ではないでしょうかね(笑)。 振り返ってみれば、戦後の日本は所帯数に比べ住宅数が少なく、国が公営住宅を供給しなければならなかった。
最近になってようやく住宅数は充足したといわれますが、中身を見れば大ききや広さは十分ではありません。 地震が来たらつぶれる木造住宅も、まだ圧倒的に多い。
つまり、住宅の需要というのは時代の流れとともに無尽蔵に出てくるということなのです。 したがって、寿命が長い建物を造ったら建設会社が儲からなくなるということはありません。
むしろ、外断熱のように、時代の求める良いものに取り組んで将来の需要をつくっていくべきなのですね」(佐々木氏)しかし、大手をはじめほとんどのゼネコンは外断熱を採用していません。 その価値はわかっているはずですが、手をつけようとしていません。
「やはり二0年前のわれわれと同じで、ユーザーがそのコストに価値を認めないだろう、と見ているのではないでしょうか。 もちろん外断熱の需要が盛り上がってたくさん建つようになれば、加速度的に参入してくるでしょう。

それに乗り遅れてはいけないが、いまは時期向早、それまでは静観、というところだと思います。 まあ、いずれ爆発的に出てくることは間違いないでしょう。
なぜなら、本当に良いものだからです」(S氏)。 同社の営業部長・K氏も、日本人と住まいの歴史的な流れのなかで、いずれ外断熱は全面的に認められてくるだろうという見解でした。
「日本は経済大国だと言われていますが、少し前まで発展途上だったことは間違いありません。 そういう時代には一0。
年住宅を求める意味って、なかったと思うのです。 日々変貌を遂げてきた都市において、道路ができたりまた、ある日突然開発のために立ち退きを迫られるかもしれない。
マンションにしても、立体的な部分を買って、そこに一生住もうなんて誰も思わなかった。 最初から次の買い換えを考えているわけですから。
そんな歴史的な環境が、ここへ来てずいぶん変わってきましたね。 発展途上から成熟期に入って人々のライフスタイルも大きく変わってきた。
マンションを代々の財産とする人もふえているのではないでしょうか。 そのなかで健康、省エネ、資産価値が高いなど時代のニ−ズにマッチする外断熱の一0。
年マンションの価値も少しずつ認められていき、日本もヨーロッパのように一0。 年住宅が当たり前になっていくのだと思います。

その需要に沿って、われわれも対応していかなければならない、ということです」(木村氏)住まい需要のゆるやかな変化のなかで外断熱を推進しはじめた南海辰村建設ですが、完全に在来工法を否定して外断熱だけに特化することも現実的ではないととらえています。 「もちろん在来工法の建物もつくって提供しています。
内断熱にしても、より良いものに進化していますから、すべての建物で結露やカビが出るわけではありません。 そのなかで『選択肢の一つとして時代のニ−ズにマッチした外断熱工法もありますよ』と提案するという立場ですね」(K氏)。
日本のマンション事情が、 いま大きな過渡期を迎えていることは確かなようです。 南海辰村建設ではビルの改修事業も行っているので、外断熱への改修についてもうかがいました。
どのような在来マンションでも、外断熱への改修は可能なのでしょうか。 「内断熱の建物は、そのまま外断熱を足しても効果は減殺されます。
せっかく暖房しても、内側に断熱材があるので躯体が温まりませんから省エネにならない。 どうせだから内断熱をはがして内装も一緒に直そうということになれば、一人前の外断熱改修になります。
また、耐震性の問題で、そのままで外断熱への改修ができないケ−スもあります。 直下型の地震を想定して補強したうえで外断熱を施せば、一00年性能を付加することは技術的には十分に可能です。
これから多くの建物が寿命を迎えますが、ユーザーにはいろいろな選択肢があると思います。 建て直す方法もありますが、容積率などの既得権を活かして改修するメリットも小さくありません。

木造の建物で、大工さんはよく『中普請』と言います。
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